【読書感想:ネタバレ注意】かえるくん、東京を救う(村上春樹)

読書

【あらすじ】ぱっとしない信用金庫の返済金の取りたて係の片桐は、ある夜「かえるくん」と名乗る2メートル以上ある巨大な蛙の訪問を受ける。軽妙な調子で語るかえるくんは、片桐に東京直下型地震を阻止すべく一緒に「みみずくん」と闘ってほしいと依頼する。戸惑いながらも協力することを約束した片桐だったが、その後さらに予期せぬ出来事に襲われる・・・

【感想・ネタバレ】「かえるくん」と「みみずくん」は『理性/感情』『意識/無意識』『善/悪』のように対立する存在であり、片桐だけでなく全ての人間の中に普遍的に存在するものである。その闘いの激しさは、人間が自らの無意識下に眠る、抑圧された感情と向き合うことの難しさ、苦しさを表している。人はどうやって「巨大地震」を引き起こしかねない自らの危険な無意識下の感情に向き合えば良いのか、その答えは安易には示されない。
ヒントになるのは「想像力」である。「目に見えるものがほんとうのものとは限らない」という文章は、わかりやすくて安直な思想や考え方に救いを求めてしまうことを戒める。自らの不遇や不満と向き合い、折り合いをつけるとき、かえるくんの「ぼくらの人生は勝ち方によってではなく、その破れ去り方によって最終的な価値を定められるのです。」という言葉が支えになるだろう。

神の子どもたちはみな踊る 村上春樹 新潮文庫

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